見知らぬ知り合い

朝、歩き始めてほぼ1年になる。

 

wifeと一緒に歩いていると、自然と知り合いが増えていくので、wifeがラジオ体操に行く日に自分一人で歩いている時まで、毎日すれ違う人たちと挨拶を交わすようになってしまった。

 

人見知りがちな自分の性格に反して朝挨拶を交わす人が増えることにはいささか抵抗を感じていたが、2人で歩いていて挨拶を交わす人を、一人で出会った時だけ無視することもできないので、結局自分も挨拶を交わす人が何人かできてしまった。。

 

休みの日に川沿いを広い道路を越えて足を延ばした日に、決まってすれ違う老夫婦がいる。

少し歩くことのおぼつかない女性を、時には腕を抱えながら男性が先を切って歩く姿を何度も目にしていた。

週末、決まって逆の方角から歩いてきて、しかも最初は川の対岸を歩いているので、向こうが同じ側を折り返してきたときに、帰りに川の逆側を歩いている僕らとしょっちゅうすれ違う。

その老夫婦は気づいていないだろうが、こちらは週末、往きと帰りの2回、歩く姿を目にするので、こちらにとってはすっかりおなじみの存在である。

 

先日、wifeが、おはようございます、よくお会いするんですけど覚えていますか?

と声をかけたのをきっかけに、僕も必ずおはようございますと声をかけるようになったのだが、相手はまだ、きょとんとこちらを見返す程度のことが多く、どうやら何が起こっているのかもわからない様子である。

 

週末決まって出合うことに加えて、その女性の歩く姿が少し義母に似ていることも、wifeがその老夫婦に挨拶までかけはじめた理由かもしれない。

 

 

金曜日、GW後半3日間の短い旅を終え、横浜に戻ってきた。

 

3日間義父母とともに過ごすことを優先して組んだ旅だったが、義妹夫婦の体調不良などで、スケジュール変更もあり、途中で企画した神戸での宿泊や高校時代の友人たちとの食事を、ちゃんとこなすのに結構苦労した。

 

事前に聞かされてはいたが、義父母の様子は会うたびに少しずつ変わっている。

 

姉妹がリレーで最大限ケアしているので、寝泊まりを共にしても自分にできることは限られてはいるが、義父の繰り返す昔話に付き合うこと程度でも何かの足しにはなるのかもしれない。

義父の繰り返す話の中に、しばしば僕も登場する。

今回はその話と現実とのギャップがちょっとした問題になったが、それはもはや大きな問題ではないのかもしれない。

 

2日目の朝、持て余していた朝の時間を使って、少し気になっていた小さな裏庭の草引きを行った。

横浜に戻った後、一番近くで両親の世話をする義姉にメールで除草剤処理とあえて残しておいた奥の花壇のように囲われた部分の手入れをお願いすると、

種を蒔いて花が咲いたら母が喜ぶ、と返事があった。

次行くときを楽しみに思う。

 

 

横浜に戻った次の日の土曜日の朝、いつものように川沿いを歩くと例の老夫婦を対岸に見かけた。

 

出がけから怪しかった雲行きがいよいよさらに怪しくなって、すこし早い場所で折り返した橋のたもとで、ちょうどその老夫婦と交錯した。

 

待ち構えていたように、wifeと僕が

おはようございます。

と声をかけると初めてその老夫婦が声を揃えて、おはようございます、と返事を返してくれた。

 

新たな知り合いがまた2人増えた。